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世界で頻繁に使われている英語名詞を、英オックスフォード辞典がこのほど、データベースで調べた。1位は「time(時間)」で、「war(戦争)」は49位、「peace(平和)」はトップ100に入らなかったという。 使われないのは21世紀が平和だからか、それとも逆か。 アインシュタイン博士と日本の哲学者、故・篠原正瑛氏の「平和」論争が興味深い。篠原氏の質問状がきっかけで2人は50年代の一時期、手紙をやり取りした。 博士は39年、米大統領に、ドイツに対抗して原爆開発をするよう勧める書簡に署名した。ヒロシマ、ナガサキへの原爆投下の「責任」を篠原氏が問うと、博士は「私は絶対的な平和主義者ではない」と返した。家族を殺そうとするナチスドイツに対しては暴力の使用も正当だった、と。篠原氏はこれに「あなたは条件付きの平和主義者だ」と批判を加えている。 条件付きの平和。悔しいけれど、これが現実かもしれない。日本だって米国に守られたカギカッコ付きの平和の上にある。核軍備競争はまさに「力で力を抑え付ける」発想だ。だが、ちょっとつつけばバランスを失って崩れるような状態を、平和とは呼べない。 往復書簡は篠原氏の家族から広島平和記念資料館に寄贈された。同館と長崎原爆資料館が戦後60年を機に集めた1000点近い資料とともに、来年夏まで展示される。 企画展の題名は「託された過去と未来」。ここにも平和の二文字はないが、どんな平和を目指すのか、自分の頭で考えなさい、と言っている。(科学環境部) 毎日新聞 2006年8月9日 |
発信箱:「平和」考 元村有希子
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