激しい競争を続けるテレビ番組制作会社24社が手を携え、インターネットや携帯向けの番組を企画、販売、管理する会社「クリエーターズ」を作った。制作は加盟する各社に任せ、番組配信会社への営業を一手に引き受ける。「地上波ビジネスはコストダウンを強いられ、既に限界状態。IT(情報技術)の技術進歩に取り残されるという恐怖感もある。打って出るしかないんです」
一度放送されただけで倉庫に眠る良質の番組。DVDの普及で旧作が利益を生む条件も整った。収益は視聴者が番組を選択した時に課金するオンデマンド方式を検討。コンテンツの著作権管理から人材育成、作品ごとに制作資金を集めるファンド運営まで手がける。
団塊世代の57歳。演出を志望した70年代前半、映画は斜陽、テレビ局は採用がなく、番組制作会社に入社した。「テレビは成長期でいろいろなことが出来た。今は冒険をせずに各局横並び。若手が夢を持てるような環境をもう一度作りたい」
01年の「ベルサイユのばら」復活公演を見て宝塚歌劇にはまった。東京公演は欠かさず見る。「公演の3時間は私の癒やし」と言いつつも、出演者のスタイル、踊り、衣装、セットを演出家の目線で見てしまう。
「アメリカは9・11同時多発テロを振り返る番組を何本も作った。それに引き換え、日本のテレビは政治的なものが作りにくい。地下鉄サリン事件の1日を描くような実録物を手がけたい」 【紀平重成】
【略歴】高村裕(たかむら・ゆたか)さん。東京都出身。東大中退。テレビマンユニオン、オフィス・トゥー・ワンを経てエキスプレス・シー・アール社長。7月からクリエーターズ社長兼務。
毎日新聞 2006年8月29日