北海道稚内市で病院臨時職員の女性(46)が殺害された事件で、北海道警稚内署の捜査本部は29日未明、いずれも高校1年の女性の長男(16)と友人の少年(15)の2人を殺人容疑で逮捕した。動機や殺害状況などについて追及している。
調べでは、長男と友人は共謀し、27日午後10時ごろ、自宅1階の浴室で入浴直後の女性の首や胸などを刃物で数回刺して殺害した疑い。2人は「大変なことをしてしまった」と容疑を認めているという。
2人は中学時代の同級生で今は別々の高校に通っていた。長男は調べに対し、「両親の離婚に不満があった」と供述しているといい、殺害の動機との関連を調べている。
捜査本部は消防に通報があった28日午前0時以降、2人に任意同行を求め事情を聴いていた。2人の説明と現場の状況に不自然な点があったため追及したところ、女性の殺害を認めた。凶器は見つかっていない。
通報直後、長男は「玄関から出て行く金髪の男を見た」と説明していた。1階居間には物が散乱して荒らされたような形跡があった。捜査本部は捜査の目を自分たちからそらすための偽装工作だったとみている。
2人が逮捕されたのは29日午前3時半過ぎで、任意同行から24時間以上経過していた。佐藤吉一署長は「少年だが、殺人という凶悪事件なので、人権に配慮しつつ捜査した」としている。
女性は長男と2人暮らし。神奈川県に住んでいた4年ほど前に夫と離婚し、実家のある稚内市に長男と移住した。03年6月ごろから地元病院の薬局で調剤補助の仕事をしていた。
逮捕前、女性の父親(74)は「私の目から見れば孫の長男はおとなしく、素直ないい子」と話していた。長男と同じ高校の同級生は「(長男は)暗い感じだった。何を考えているのかわからないところがある」と話した。事件が報道された後、学校では「長男がやったのではないか」とうわさになっていたという。
【金子淳、山本喜久雄】
毎日新聞 2006年8月29日