28日、収容されている国後島・古釜布の民家で毎日新聞のインタビューに応じた「第31吉進丸」の乗組員ら。(右から)紙屋春樹さん、坂下登船長、1人(ロシア人通訳)おいて川村昭充さん=毎日新聞モスクワ支局、オクサナ・ラズモフスカヤ助手写す
【ユジノサハリンスク杉尾直哉】北海道根室市の漁船「第31吉進丸」がロシア国境警備隊に銃撃・拿捕(だほ)された事件で毎日新聞のオクサナ・ラズモフスカヤ助手(ロシア人)は28日、国後島古釜布(ふるかまっぷ)で取り調べを受けている坂下登船長(59)ら3人の乗組員と会見した。事件発生以降、日本の報道機関が乗組員3人とじかに接するのは初めて。坂下船長は、拿捕当時について「霧が深くて(国境警備隊が撃った警告の)信号弾は見えなかった」と説明した。また、関係者は同助手に対し、船長は7日までに起訴され、残る2人の乗組員は週末にも処分が決まり、裁判に参加せずに早期釈放となるとの見通しを示した。
面談は弁護士の立ち会いの下、行われた。船長は、ロシア警備隊は通常、無線の16チャンネルを通じて警告を発するが「無線を切っていたため、警告無線も聞くことができなかった」と述べた。一方で、「自分が悪い」と語った。
3人は、古釜布市内の一般アパート2階に収容されていた。家具もない部屋の床に正座。乗組員の川村昭充(あきよし)さん(29)と紙屋春樹さん(25)は黙ったまま。坂下船長は、「若い2人は、仲間が亡くなったことにショックを受け、起きてしまったことを思い出したくないんです」と説明した。
なぜ「密漁」をしたのか、との質問に対し、坂下船長は「カニがいるから。違反とは分かっていたが」と話した。坂下船長はさらに「足が痛む。もし解放されるなら9月にも病院に入院したい」と述べ、早期解放を訴えた。
また、関係者が同助手に明かしたところでは、坂下船長は7日までに起訴される見通し。裁判は1時間程度の即決裁判方式が取られ、同船長が第31吉進丸で帰る可能性もあるという。
3人は25日、宿泊施設「友好の家」から現在の収容先に移送された。同助手によると、ベッドや食堂などの設備が整った「友好の家」に比べ、アパートでの生活状況は厳しい様子だったという。
一方、タス通信によると、ロシアのフリジンスキー軍最高検事長は28日、日本漁船が露国境警備隊に銃撃・拿捕された事件について、警備隊員の行動が国際法上も適法だったと強調し、警備隊員に対する刑事事件の立件をしないことを明らかにした。