コスモスが咲き乱れる丘の上で笑い合う小学生が2人。立っている女児が水筒の水をゴクゴクと飲む。人物にピントを合わせ、背景は極力抑えた。「癒やし」を優しく表現したかった。
受賞作「秋の日に」は、群馬県の小学校の遠足風景をとらえた作品だ。「自然の中での人物撮影が好き。男の子と女の子のあどけない姿を見て、夢中でシャッターを押した」という。
カメラと出合ったのは中学2年の時。天体観測に夢中になり、父親のカメラを借りて星の写真を撮り始めた。
高校では写真部に入り、66年に日本報道写真連盟(日報連)の館林支部に入会。先輩たちからさまざまなテクニックを教わり、撮影にのめり込んだ。
支部の月例会では、本部から送られてくる月刊誌の評論や講評をもとに、角度や光のとらえ方、トリミングについて仲間と研究を重ねてきた。
「毎年このコンテストに応募してきたが、これまでの最高は銀賞。グランプリとは驚いた。子供たちの会話が聞こえてくるような表現が評価されたのかな」と照れる。
勤務先は館林市役所の健康推進課。母親から育児相談を受けたり、栄養失調の子供や障害児の問題に取り組む。休日には全国各地を回り、その土地で暮らす人々の生活を追う。
「写真は一期一会。一瞬を見逃さず、人物の喜怒哀楽をいかにとらえるかが大切です。これからも人間を撮り続けていきたい」と熱く語る。(中野秀喜)
【経歴】田口 正夫さん(たぐち・まさお)さん 群馬県館林市在住。97年から日報連館林支部長を務める。妻と長女、二男、実母の5人暮らし。カメラ以外の趣味は山歩き。56歳。
毎日新聞 2006年8月6日