大学の研究成果を新薬や医療器機の開発につなげるため、製薬会社などに成果を橋渡しする拠点作りに、文部科学省が来年度から取り組む。全国の大学などから公募により10カ所程度を選ぶ方針。再生医療やゲノム研究などの先端医学研究を、医療現場で実用化しやすいよう整備していく。
新薬開発には、人を対象とした臨床試験が行われる。臨床試験にはデータ管理や統計解析、審査機関への申請書類作成などが必要。米国では大学に企業の新薬開発経験者がいて、書類やデータをチェックする支援体制が充実しているが、国内では十分でない。このため、国内の製薬会社が新薬開発の環境が整っている海外の大学などと組んで治験を行う「治験の空洞化」も進んでいる。
日本製薬工業協会によると、国内製薬会社の治験の最初の実施場所は1993年は日本が36%、海外が18%だったのに対し、2000年では日本が20%、海外が43%と逆転した。
このような現状を改善するため、文科省は医療に結びつく研究成果を上げている大学などを対象に公募する。企業が行う大規模な臨床試験の前に、大学レベルで小規模な試験ができる体制を整える。具体的には来年度、全国から10カ所程度を選び、合わせて30億~40億円程度を検討中で、5~10年程度支援を継続する。臨床試験の専門医師、統計の専門家などのほか、有望な研究成果を見きわめたり、相談に応じる人材も育成する。こうした拠点を全国のブロック圏域ごとに整備することを目指す。【下桐実雅子】
毎日新聞 2006年8月10日