第二次大戦末期にナチス親衛隊に所属していたことを告白したドイツのノーベル賞作家ギュンター・グラス氏は3日までに、12月に授賞式が予定されていた「国家間の和解に貢献した人物」に与えられる「国際懸け橋賞」の受賞を辞退した。
ナチス時代のドイツを批判してきたグラス氏は「ドイツとポーランドの和解」に貢献したとして3月に受賞が決定。しかしウェルト紙によると、同氏は審査委員長に「現在の両国の緊張関係」を理由に受賞辞退の意向を伝えた。受賞した場合に、授賞式で抗議行動が起きることへの懸念を示したという。
審査委員長は公共テレビMDRの番組で「グラス氏は受賞に値する人物だ」と強調したが、同氏の辞退を受け入れたと述べた。
同賞はナイセ川を挟んで隣接するドイツのゲルリッツとポーランドのズゴジェレツの両市が1993年に創設した。
グラス氏はポーランド北部グダニスク市(元ドイツ領ダンチヒ)生まれ。同市が以前にグラス氏に与えた「名誉市民」の称号をはく奪するとしていた市議会与党は8月31日、多数の賛成票を得られないとしてはく奪を求める決議案を取り下げた。(共同)
毎日新聞 2006年9月4日