他室から聞こえる通常の生活音に立腹し、電動ドリルなどによる騒音でマンション階上の女性を不眠症にさせたとして、傷害罪に問われた大阪府内の無職、中脇秀則被告(30)に対し、大阪地裁(水野将徳裁判官)は8日、懲役1年、保護観察付き執行猶予4年(求刑・懲役1年)を言い渡した。中脇被告は自分を除く家族全員が聴覚障害者で会話ができず、弁護人は「特殊な家庭環境が背景にある」と執行猶予付き判決を求めていた。
判決によると、中脇被告は上の部屋からの生活音に腹を立て、昨年11月から今年6月まで連日連夜、自室天井に電動ドリルを刺して作動させたり、バーベルをたたきつけるなどして、女性を重い不眠症にさせた。
検察側の調べなどによると、中脇被告は小学6年の時に亡くなった父、現在同居している母、嫁いだ姉とも聴覚障害者。自身は高校に入学したころから家に引きこもるようになり、足音など通常の生活音にも過敏に反応するようになったという。
弁護人は最終弁論で「会話のない静か過ぎる部屋」で長期間暮らしたことが影響していると主張。水野裁判官は「過去にもステレオを過剰に鳴らすなどしており、いきさつや動機に酌むべき点は乏しい」と述べながらも、「反省している」として執行猶予を付けた。
近隣同士の騒音被害を巡っては、CDラジカセを大音量で鳴らし続け、近所の女性を睡眠障害や高血圧にさせたとして奈良県平群町の無職、河原美代子被告が傷害と暴行の罪に問われ懲役1年の実刑判決を受けた(控訴)ケースなどがある。【中本泰代】
毎日新聞 2006年9月8日