身に覚えのない有料インターネットサイトの利用料などを請求される「架空請求詐欺」で、督促状に「封書」を使う事件が今夏から急増していることが12日、愛知県警や名古屋市消費生活センターの調べで分かった。8月には封書を使った架空請求で男性2人が現金計約200万円をだまし取られる多額詐欺事件も発生した。従来ははがきが使われることが一般的で、県警などは「正規の通知と思わせるために手口を変えてきた」と分析、注意を呼び掛けている。【加藤潔、鈴木顕】
県警の調べでは、封書詐欺の被害に遭ったのは名古屋市内の70代の男性2人。
このうちの1人(74)は8月初旬、自宅に公的機関を装った封書が届いた。中には「料金未納で裁判が起こされている」「連絡がない場合、不動産を差し押さえる」などと促す文書が入っていたという。驚いた男性が文書にあった問合せ先に電話すると、出た男に「弁護士」を紹介され、裁判の取り下げ費用として90万円をだまし取られた。
さらに、もう1人の男性(73)も同月下旬、同じ手口で紹介された「弁護士」に、訴訟の取り下げ費用として現金109万円をだまし取られた。
2件ともに、差出人として封書に「東京管理事務局」と記載されていた。連絡先の電話番号も同一だったが、事務所の所在地は異なっていた。県警は「警察が認知できたケースでも、封書での請求が確実に増えている」と話す。
市消費生活センターの調べでも、これまでは請求にはがきが使われるケースが大半で、封書が使われるケースはわずかだった。しかし、封書を使った架空請求の相談件数は7月から増加。8月は130件(速報値)となり、前月比94件も急増した。今月もすでに50件以上の相談が寄せられているという。一方ではがきを使った請求の相談件数は8月253件(同)で、前月比25件減った。
県警は、手口の変化について、「はがきでの架空請求が世間に浸透してだましにくくなった。また、封書のほうがより公的機関からの通知らしく装える」と分析。「はがきでも封書でも実態は同じ。覚えのない請求には決して応じず、警察や行政機関に必ず相談してほしい」と話している。