財政難に陥った自治体の再建制度について検討している総務省の「新しい地方財政再生制度研究会」(座長、宮脇淳・北大教授)は18日、自治体が事実上破たんした場合に金融機関からの借金の全額、あるいは一部を棒引きする債務免除制度の導入を見送る方針を固めた。金融機関の貸し渋りが起き、地方自治に影響しかねないとの意見が、研究会や同省内で強かったためだ。来月にもまとめる報告書では今後の検討課題にとどめる予定だ。
研究会は、自治体が抱える債務の免除や、返済期間の延長などの債務調整の導入の是非について検討してきた。宮脇座長は「(自治体が破たんしても)これまでは最終的には国が面倒をみると金融市場が認識し、一部の自治体もそう考え、財政規律に影響を与えてきた」と指摘する。債務調整を導入した場合、金融機関が融資の際に自治体の財政状況を基に融資リスクを判断するため、研究会は自治体への市場原理導入を意識していた。
しかし、全国知事会が今月12日に開いた再建制度の小委員会の初会合では、債務調整を認めると、財政力が弱い自治体への貸し渋りが予想されるとして否定的な意見が強かった。
自治体には税収入があり、財政力の弱い自治体の財源不足を補う地方交付税などの収入もある。研究会は、金融機関主導による債務整理の対象にはならないと判断した。返済期間の延長も見送られる可能性が高い。
一方、研究会は自治体だけでなく地方公社や第三セクターも含めた財政状況を示す新指標を導入し、自治体の財政悪化度に応じて早期是正と破たん・再生の2段階の再建策を講じることを検討している。再生段階では、建設事業などに限られる現行の地方債とは異なり、人件費などの自治体運営に使うことができる赤字地方債の導入も目指している。【葛西大博】
毎日新聞 2006年9月19日