筋肉を破壊する毒性を持つこともあると分かったスギヒラタケ
04年秋にキノコのスギヒラタケを食べた腎障害の患者が、相次いで急性脳症を発症した問題で、スギヒラタケに、筋肉の細胞を壊す毒性がある可能性を、高崎健康福祉大(群馬県)の江口文陽教授(キノコ学)が突き止めた。筋肉細胞の破壊は、腎不全や脳症につながることもあり得るため、江口教授は「毒性解明の可能性が出てきた」と話す。
20日に秋田市で開かれる日本きのこ学会で発表する。
江口教授は、正常なラットと人為的に腎不全にしたラットを、通常の餌を与える群とスギヒラタケを与える群に分け、それぞれ血液を分析した。
すると、スギヒラタケを食べた群では正常ラット、腎不全ラットとも、脳症の発生を示す酵素や、筋肉細胞の破壊を示す酵素が、血液から検出された。特に腎不全ラットでは、筋肉破壊を示す酵素が、正常ラットの5.7倍も多かった。
骨格筋が融解・壊死(えし)する人間の病気としては、「横紋筋融解症」が知られている。重症になると多臓器不全で死亡する病気だ。壊れた筋肉細胞から流れ出した成分が、腎臓に負担をかけるため、急性腎不全を併発することが多い。また一般に、腎不全が重くなると、脳症を起こすことがある。
仏とポーランドでは、スギヒラタケと同じキシメジ科のキノコ「キシメジ」を食べた人が横紋筋融解症になって死亡したとの報告がある。
教授は別に、東北-九州の26都府県78地点で昨年秋に採取したスギヒラタケを、正常マウスに食べさせる実験もした。47地点のキノコに毒性があり、食べたマウスは12~48時間後に死んだ。
スギヒラタケは栽培されておらず、杉などの切り株に自生し、夏から秋が採取の本格シーズン。江口教授は「04、05年のスギヒラタケとも毒があった。今年も食べないでほしい」と呼びかけている。【江口一】