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社説:新司法試験 改革の理念見失わぬように

作者:未知  来源:mainichi-msn   更新:2006-9-25 9:02:38  点击:  切换到繁體中文

 

 司法制度改革によってスタートした法科大学院の修了者を対象とした新司法試験の合格者が、法務省の司法試験委員会から発表された。合格者は1009人、合格率は48.3%だった。

 旧司法試験の合格率が2、3%だったことに比べれば、広い門になった印象を受けるが、修了者の7、8割を合格させるという当初の想定にはほど遠い。しかも、来年からは法学未修者コースの法科大学院修了者が受験するほか、浪人組が累積されるため、合格率は3割を下回るとの予想もある。

 試験が難しくなると、大学院側も学生も受験対策を重視して、法的な思考力に加えて豊かな社会常識、幅広い人間性を備えた法曹を養成するという改革の理念を逆行させかねない。もともと小中学校時代から始まるマニュアル化した受験教育の弊害で、狭あいな法律家が目立つようになったことが、改革の一大要因であった経緯を忘れてはならない。一部の若手法曹に対しては部内からも「受験問題は解けても、『法学入門』が分かっていない」といった批判が相次いでいる。司法試験委員会はさらに出題を工夫したり、選抜基準を再検討する必要がある。

 改革では法曹人口を2018年までに2.5倍に増やして5万人規模とすることを目指してきた。来年秋には新試験、旧試験の合格者を合わせた約2500人の法律実務家が誕生し、司法改革審議会の意見書が掲げた年間3000人の増員目標には一歩近づく。

 新試験の合格者数は徐々に増やされる見通しだが、裁判所の敷居を低くして潜在的な司法へのニーズに応えるためには、早急に法曹人口を増加させねばならない。社会が求めるのは、権威の上にあぐらをかくことなく、市民の目線で活動する法律家であり、不適格者は情報を十分に開示した上で自由競争によって排除されるべきことも踏まえて、合格者数は思い切って見直してもよいだろう。

 今回の合格率が想定を下回った一因は、74校もの大学院が設立されたことにある。各大学院には厳格な修了認定が求められていただけに、今回成績が振るわなかった大学院は、修了認定時の成績評価の見直しはもちろん、カリキュラムや指導方法の再検討を迫られることになりそうだ。

 しかし、旧試験で実績のなかった大学の大学院や少人数教育が功を奏した大学院が目についたのは、法曹界に新風を吹き込む動きとして好ましい。法学未修者が受験する来年以降が注目されるが、個性豊かな教育から多彩な法律家が輩出されることを期待したい。今後は合格率が高い大学院に人気が集まり、淘汰(とうた)が進むとも予想されるが、各大学院は受験予備校化する愚だけは犯してはならない。

 新試験の合格者は、司法研修所の新60期修習生として1年間の司法研修を受ける。現在、旧試験に合格して修習中の60期と共に巣立つので、何かにつけ比較されることになりそうだが、改革の真価が問われていると心得、自己研さんに努めてほしい。

毎日新聞 2006年9月25日


 

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