仏地方紙が報じた国際テロ組織アルカイダの最高指導者、ウサマ・ビンラディン容疑者の死亡情報について、諸説飛び交う中、「ビンラディン容疑者が新たなビデオ映像を流すよう、死亡情報がリークされた」という“おびき出し”説も出始めた。一方、パキスタンのムシャラフ大統領は25日発売の著作で、アフガニスタン東部に潜伏している可能性を指摘。同容疑者の行方を巡る論議はしばらく続きそうだ。
ロイター通信によると、おびき出し説を主張するのは、エジプトのアルアハラム政治戦略研究所。同研究所は「西側情報機関やサウジアラビアは、ビンラディン容疑者が姿を現すのを望んでいる」と分析。死亡説を否定するために、ビンラディン容疑者に健在ぶりを示す新たなビデオ映像を流させ、居場所の特定につなげようとしたのでは、との見方を示した。
またムシャラフ大統領が潜伏先として指摘するのは、アフガン東部コナル州。著作「イン・ザ・ライン・オブ・ファイアー」の中で、「コナル州にはたくさんのサウジアラビア人がいることが、ビンラディン容疑者の潜伏先である可能性を示している」と推測した。
死亡情報は23日、仏紙レスト・リピュブリカンが、サウジアラビアの情報機関からフランスにもたらされた情報として「ビンラディン容疑者が8月に腸チフスで死亡した」と伝えた。また、米誌タイム(電子版)も同日、サウジアラビアの関係筋の話として「水を媒介とする感染症を患い、既に死亡した可能性がある」と報じた。一方で、欧米の当局は「死亡は確認されていない」などと否定している。
ビンラディン容疑者の新たなビデオ映像は、04年の10月末を最後に流れていない。【草野和彦】
毎日新聞 2006年9月26日