東京大などの研究チームが、高等専門学校の歴史の授業にオンラインゲームを導入し、娯楽以外の効用を実証するための研究を進めている。研究チームの馬場章・東京大大学院教授(歴史情報論)は「ゲームは負の側面が強調されることが多いが、教材として使い新しい教育法を見いだしたい」としている。
研究は2010年までの5カ年計画。同大の他、ゲームソフト開発のコーエー(横浜市港北区)などが協力している。
教育現場での実証実験は、詫間電波高専(香川県三豊市詫間町)の1、2年生の歴史の授業に、同社の大規模多人数参加型ロールプレイングゲーム「大航海時代オンライン」などを活用。ゲームを使った場合と使わなかった場合の理解度の差などを研究する。高専が選ばれたのは、パソコン環境が充実し、大学受験にとらわれずに比較的柔軟な授業の計画ができるからだという。
同高専での試験は7月からスタートした。日本史の戦国時代、世界史の大航海時代の授業で、▽ゲームを使わず普通の授業を受ける▽ゲームだけをする▽4人1組で、「歴史上の人物を探しだし、記念写真を撮る」との課題を解決しながらゲームをする--の3グループに分け、授業の前後で歴史の理解度をアンケート調査した。
結果は分析中だが、グループで取り組んだ学生からは「昔の世界に行ったようだった」「新鮮で面白い」と評価する声が出た一方、ゲームだけをした学生は「オンラインゲームを活用して授業をする意味が分からない」など否定的な意見もあったという。
馬場教授は「来年度までかけて、より有効な授業の形式を考え、授業への関心向上や、知識量の増加などの効用があるか、一つ一つ検証していきたい」と話している。【大場あい】
毎日新聞 2006年9月1日