岐阜県庁の裏金問題で、裏金を焼却処分したとされる県可茂用水道事務所の元幹部の一人が3日、毎日新聞の取材に応じ、「使うこともできず、後の代に残すのもよくないと考えた。今思えば、荒っぽいやり方だった」などと語った。弁護士らで作る「プール資金問題検討委員会」は1日に知事に提出した報告書で「費消した可能性も否定できない」としているが、元幹部は「使っていない」と否定した。
検討委の報告では、同事務所の元幹部2人が県の官舎で前任者から受け継いだ現金約15万円と残高約70万円の預金通帳を焼いた。しかし、2人とも金融機関名や通帳の口座名義、番号を記憶しておらず、焼いた時期などの証言にも食い違いがあった。
元幹部は取材に対し、この2人を自分と当時の上司と認め、前任者から裏金の入った金庫を引き継いだのが00年4月ごろだったと説明。「触らない方がいい金がある」とだけ言われ、管理方法などについての説明はなかったという。上司に相談したところ「県に戻すわけにも使うわけにもいかない」と言われ、「2人で官舎のキッチンコンロで約15万円を焼いた。通帳については、破って捨てたかもしれない。金庫の中にあった印鑑なども捨てたはずだ」と語った。元幹部は焼却処分について「荒っぽいやり方だった」と反省する一方、「上司は後に引き継ぐのはよくないと考えた。今の感覚では理解されないだろうが、倫理観からだったと思う」と釈明。「すべてを明らかにする選択肢はなかったのか」という記者の質問に対しては「組織の金を個人で処理できなかったので、上司の判断を仰ぎ従った。あるはずのない金を持たされて苦しい気持ちから燃やした」と語った。
検討委の報告では、可茂用水道事務所のほか、学校人事課で現金約400万円が焼却され、岐阜駅周辺鉄道高架工事事務所で約100万円が廃棄された、とされている。
このほかに統計調査課で「自分の異動前に100万円を焼却した」と当初証言した担当者がいたが、その後、「前任者から300万円を引き継ぎ、課で全額費消した」と証言を変えた。用途は上司の交際費や東海3県1市のソフトボール大会、課の親ぼく会の2次会費などだったとされる。【中村かさね】
毎日新聞 2006年9月4日