手元で音量などを操作できる「ウォークマンケータイ」
携帯電話各社が、音楽プレーヤー機能でしのぎを削っている。先行するau、追うボーダフォン、「多機能」で勝負するNTTドコモと、それぞれの思惑も交錯する。今なぜ、音楽ケータイなのか。【扇沢秀明】
音楽分野で先行したのはau。04年に始めた「着うたフル」のサービスは携帯電話で楽曲を丸ごとダウンロードでき、シェアを伸ばす原動力になった。現在、携帯端末機で音楽をダウンロードできるサイトは89もあり、auを通じてダウンロードされた曲は延べ6000万曲を超えた。
音楽サイトからのダウンロード購入は、パソコンを経由するとクレジットカードでの決済が一般的だ。だが、携帯サイトなら電話料金と一緒に支払える。au広報部の新井宏史主任は「クレジットカードを持たない10代の若者にとって、電話料金と一緒に音楽代も支払えることが、着うたフルの魅力の一つになっているようだ」と話す。
auは、この強みをさらに生かそうと6月、連続30時間再生が可能な音楽機能を前面に打ち出した「ウォークマンケータイ」(ソニー・エリクソン製)を発売。これに対しボーダフォンは8月、「着うたフル」機能を装備した4新機種を「ソフトバンクモデル」として投入し、反撃する。
背景には、電話番号を変えずに携帯電話会社が変えられる「番号ポータビリティー」の開始(10月24日)がある。
着うたフル機種の投入について、ボーダフォン広報部の古屋勝英課長代理は「番号ポータビリティーの実施を前に、他社と同様のサービスは不可欠」と、顧客の流出対策であることを明かす。
一方、携帯電話シェアトップのNTTドコモは、「着うたフル」重視のauやボーダフォンとは異なる立場を取る。
着うたフル対応は3機種あるが、同社マルチメディアサービス部の前田義晃部長は「利用者の1カ月の平均ダウンロード数は平均5曲。むしろ当社はパソコンとの連携性の良さを重視している」と説明。CDなどからパソコンに取り込んだ曲を、携帯電話にダビングできる機能を充実させている。
ただ、ドコモは、音楽機能を打ち出してauと同じ土俵に上るのは得策でないと判断。「おサイフケータイ」など先行する機能を前面に出し、「音楽は多くの機能の一つ。総合力で勝負」のスタンスをとっている。
携帯電話の音楽機能をめぐっては、今年、ボーダフォンが自社携帯にデジタルオーディオプレーヤーで世界シェア1位の「iPod」機能を搭載する--との観測が流れ、大きな話題になった。同社は公式に否定したが、今も販売店には問い合わせがあり、関心の高さをうかがわせる。
ITライターの村元正剛さんは「音楽ケータイの音質はまだ専用のデジタル音楽プレーヤーに劣るが、ポップスやロックなどを気軽に楽しむには十分。iPodなどを持たない人には、これ1台で済むメリットもあり、今後、中高年にも普及しそうだ」と話している。