サッポロホールディングスに買収提案している米系投資ファンド、スティール・パートナーズの西裕介・日本法人代表は22日、毎日新聞のインタビューに応じ、ホワイトナイト(白馬の騎士=友好的買収者)となる事業会社が現れれば保有株の譲渡を検討すると表明した。そのうえで、「不動産事業の買収者が(サッポロの)潜在的価値を最も高める」と述べ、アサヒビールなどの同業ではなく不動産会社への株式譲渡もあり得ることを明らかにした。同ファンドが報道機関の取材に応じるのは初めて。
西代表は「我々は経営のプロではない」と述べ、今回のサッポロへの買収提案が「投資目的」であることを強調した。さらに、「今回の提案は再編を促しているわけではない」と述べ、ビール業界の再編を狙っているとの見方を否定。ただ、ホワイトナイトが現れた場合は「事業計画などの中身を見て判断したい」と、譲渡価格などの条件次第で保有株を売却する可能性を示した。
サッポロのホワイトナイトにはアサヒビールやキリンビールなど同業会社が浮上しているが、西代表は「資産のウエートが高いのは不動産事業で、そこが活性化して価値が大きくなった方が良い」と述べ、ビール事業より収益力の高い不動産事業を軸に企業価値を高める必要があるとの考えを示した。
サッポロが新株発行など買収防衛策を発動した場合は、「不合理な理由であれば全面的に法的手段に訴えて行動を起こす」と強調した。【三沢耕平】
◆スティール・パートナーズ 米系投資ファンド。日本での運用額は推定4000億円で、現在29社の株式を大量保有(5%以上)している。昨年10月には明星食品に敵対的TOB(株式の公開買い付け)を仕掛けて失敗したが、最終的には日清食品に保有株を売却して30億円以上の利益を得た。昨年以降、大手商社から人員を補強するなど日本での投資活動を強化。サッポロ以外にも、江崎グリコ(14.44%)やブルドックソース(10.15%)、日清食品(9.28%)など多くの食品銘柄の株式を保有している。
■インタビューの主なやり取り
サッポロホールディングスに買収提案している米系投資ファンドのスティール・パートナーズは22日のインタビューで、事業会社への保有株売却を示唆した。特に、不動産事業会社への売却の可能性に言及したことで、アサヒビールやキリンビールなど再編機運の高まっていたビール業界に影響を与えそうだ。主なやりとりは次の通り。【聞き手・三沢耕平】
--サッポロ株を66.6%まで大量に買い付ける目的は?
◆公開買い付けなので、お金さえあってできることなら全部買いたい。サッポロは不動産事業もビール事業も潜在性は残っている。こちらは運用のプロだが経営のプロではない。あくまで株主という立場をキープし、現経営陣をサポートしたい。
我々は(買収対象の会社の)価値を棄損するどころか、むしろこれまでも誰よりも価値を評価し、誰よりもお金を払い、今回も誰もつけたことのないような値段をつけた。今までも我々が株主になったことで(その会社の)価値が創造されている。
--別のビール会社がスティールを上回る価格で対抗TOBを実施すれば応じますか。
◆そういう会社が出てくるのはベストのシナリオではないが、どんな考え方で買収するのか、経営に対する考え方や事業計画、価格などの条件を正当に評価させていただく。ファンドは事業の専門家ではないのでベストバイヤーでない。
--ベストバイヤーは?
◆業界の1番手か2番手か、海外かもしれない。ただ、サッポロの資産のウエートの高いのは不動産事業。株主価値の観点からいくと、そこでのストラテジックバイヤー(戦略的買収者)が最もこの会社の潜在能力を高めると思う。ただ、あくまで今回の提案の趣旨は再編を促しているわけではないので勘違いしてほしくない。
毎日新聞 2007年2月23日 3時00分