8月に大阪で開幕する世界陸上選手権の女子マラソン最終代表選考会を兼ねた名古屋国際女子マラソン大会は11日、名古屋市の瑞穂陸上競技場を発着点とする42.195キロのコースで行われ、橋本康子(セガサミー)が2時間28分49秒で初優勝した。レースは橋本と弘山晴美(資生堂)が終盤まで競い合ったが、残り700メートルで橋本が弘山を振り切った。橋本は「2時間26分を切る」という内定条件をクリアできなかったが、有力候補に浮上した。連覇を狙った弘山が2位。2年ぶりのフルマラソンとなった大南敬美(トヨタ車体)が3位、大平美樹(三井住友海上)が初マラソンで4位に食い込んだ。世界選手権の男女マラソン代表(各5人)は12日の日本陸上競技連盟の理事会、評議員会で決まる。(スタート時の気象条件=晴れ、気温7.8度、湿度42%、北の風3.1メートル)
◇レース経過
強風のためペースが上がらず、35キロ過ぎまで6人が先頭集団を形成する我慢比べの展開になった。残り3.5キロで弘山が仕掛け、首位争いが弘山と橋本の2人に絞られると、残り700メートルの上り坂で橋本がスパート。集団の中盤で余力を蓄えていた橋本が弘山を引き離し、国内マラソン初制覇を果たした。2位の弘山は6秒差だった。
大南は2キロ地点の直前で転倒したことが響き、抜け出すことができなかった。終始、トップ集団を形勢した大平、モンビが上位入賞を果たした。ペースメーカーと25キロ付近までレースを引っ張った高仲は、途中棄権した。【栗林創造】
◇橋本、冷静に勝負どころ見極める
残り700メートル、最後の上り坂で、橋本のスピードが一気に上がった。38歳の弘山は険しい表情になり、追いつけない。どこでスパートするかが難しい展開になったが、冷静に勝負どころを見極めた橋本が悲願の初優勝を果たした。
前半は瞬間風速10メートル超の向かい風が吹く悪条件。橋本は「後半に力をためるため、前半は後ろについた」と飛び出さず、残り3.3キロ付近で弘山との勝負に。だが、ビデオで弘山の走りを研究していたという橋本は、相手の動きや息遣いの変化を感じていた。「自分の方に余力がある」と、得意の上り坂でスパートした。
31歳の橋本は今回が5回目の出場。05年は4位と健闘したが、世界選手権の代表から漏れた。橋本を指導する森岡監督は「2時間25分台でもだめだった」と優勝にこだわるようになった。昨年6月、右ひざを故障し、チームが全日本実業団駅伝の出場を逃したことも発奮材料になった。
真っ先に橋本と抱き合った森岡監督は「今回は本人の決意を感じていた」という。2月から約3週間行った中国・昆明の高地合宿では順調に走り込んでいた。
内定条件の「2時間26分を切る」には及ばなかったが、強風や弘山に勝っての優勝は評価できる。「暑いレースは得意。大阪の夏の蒸し暑さも知っているし、親しみがある」と橋本。初のマラソン代表に意欲を見せた。【村社拓信】
◇女子マラソンの代表選考会、すべて終了
女子マラソンの代表選考会は5大会すべてが終了。日本陸連が定めた条件を満たした内定者は大阪国際優勝の原裕美子(京セラ)のみ。残る4人は各大会の上位者から順位、記録、気象条件などを比較して決める。
寒さと雨に苦しんだ東京国際を制した土佐礼子(三井住友海上)の代表は確実。大阪2位で好記録だった小崎まり(ノーリツ)、強風の名古屋で優勝した橋本も有力だ。
残る1人は資生堂勢の争い。ドーハ・アジア大会銀の嶋原清子は堅実な走りでアピールした。大阪3位の加納由理は初マラソンとしては記録が良かった。名古屋2位の弘山は実績と最後まで優勝を争った粘りがある。【石井朗生】
○…連覇を逃した弘山は「考えがまとまらない。後になって悔しくなるのでは」と複雑な表情。終盤は自ら先頭に出て仕掛けたが、最後は力尽きた。「トラック勝負と思ったら橋本さんに行かれて反応しきれなかった。去年と違って『絶対勝つ』という感じではなかったかな」。世界選手権の女子マラソンは自身の39歳の誕生日が開催日。「出たいが、この結果ではケーキを食べながらテレビを見るのかな」とあきらめ顔。今後もマラソンに挑むかどうかは未定だが、「自分が挑戦したいことが見つかればやるでしょう」と語った。
○…2年ぶりのマラソンで3位に入った大南は1.5キロ付近でまさかの転倒。それでもあわてず、33キロ付近では先頭集団を引っ張る積極性を見せた。レース中盤で転んだ03年世界選手権に続くアクシデント。「またコケてしまって頭は真っ白。でもその後は冷静にリラックスして走れた」。長く悩まされた左ひざのけがが回復し、久々に十分練習を積んで臨んだ結果に「精いっぱい走れたので満足」とも。今回の結果をバネに北京五輪を目指す。
毎日新聞 2007年3月11日 19時21分 (最終更新時間 3月11日 21時52分)