女子マラソンのアテネ五輪金メダリスト、野口みずき(27)の新所属先が、医療器機メーカーのシスメックス(本社神戸市中央区、家次恒社長)に決まったことが30日、明らかになった。1日正式発表される。シスメックスは30日限りで廃部となったグローバリー陸上部をそのまま受け入れる形で女子陸上部を立ち上げ、藤田信之監督(65)はじめスタッフ、選手ら16人全員を移籍させる。
08年北京五輪での連覇を狙う野口にとって、最大の懸案事項だった移籍先はシスメックスに決まった。臨床検査機器、検査用試薬などの開発、販売を手がける医療業界最大手で、昨年のアテネ五輪のドーピングコントロールセンターには同社の分析装置が設置された。
グローバリー陸上部との縁は深い。02年から選手の健康管理のために同社の末梢(まっしょう)血管モニタリング装置「アストリム」を導入。野口はその成果もあって見事にアテネを制し、アテネ五輪後の11月には同社からグローバリーに「アストリム」が寄贈された。
野口は三重・宇治山田商からワコールに進んだが、恩師の藤田信之監督が退社したのを追って退部。失業保険で生活しながら、同監督とともに99年にグローバリーに移籍した。だが、グローバリーは9月に主要事業の先物取引から撤退。先月1日には商品取引所法違反容疑で山田保弘社長らが逮捕されてしまった。
そこで練習環境の保持などを条件に支援先を募り、打診のあった数社の中からシスメックスに決定。藤田監督の希望通りに野口ら全部員が移籍し、活動拠点の京都市内の寮もそのまま維持できることになった。
「全部、監督にお任せしている」と話していた野口は、1日に藤田監督、シスメックスの家次社長らとともに会見を行う。目標とする北京五輪へ向け、これ以上ない環境が整うことになる。
▽シスメックス株式会社 設立は1968年(昭43)2月20日。資本金は79億5459万8720円。所在地は兵庫県神戸市中央区。事業内容は臨床検査機器、検査用試薬、粒子分析機器ならびに関連ソフトウエアなどの開発・製造・販売・輸出入。社員1635人。主な販売先は国公立病院、一般病院、大学、研究所、医療機関ほか。輸出先は世界150カ国以上。
スポーツニッポン 2005年12月1日