全日空1603便(ボンバルディアDHC8-Q400型)の胴体着陸事故で閉鎖されていた高知空港(高知県南国市)は、事故から一夜明けた14日午前、運用を再開した。到着一番機となったのは大阪(伊丹)発の全日空機で、事故機と同型のボンバルディアDHC8-Q400型。定時より9分遅れの午前8時4分、23人の客を乗せ、無事に滑走路に降り立ったが、事故原因の解明はこれからのため、利用者からは安堵(あんど)と不安の声が交錯した。
再開第1便は、定員74人で搭乗率は31%、キャンセルは1人だった。全日空大阪空港支店によると、乗客数は通常よりやや少なめという。
全日空は国土交通省の耐空性改善通報を受け、同型機を緊急点検。大阪空港で待機していた8機は、いずれも異常がなかったため、同空港発着の7路線計46便(欠航した2便を除く)で運航を再開した。予約客は計約2000人で、定員に対する予約率は60.8%とほぼ通常通りという。
高知空港の到着ロビーには、カメラを構えた報道陣約30人が詰めかける中、8時10分ごろから搭乗客が次々と姿を表した。大半はスーツ姿の男性でインタビューに応じたり、足早にタクシーに乗り込んでいた。
機内では、機長が「この飛行機は十分に点検をしているので、安心してください」とアナウンスした。ほとんどの乗客は落ち着いた様子だったという。
大阪府豊中市の会社員、桜井信一さん(40)は「車輪の見える右後方の座席に座っており、着陸前に『どうか、タイヤよ出てくれ』と心の中で祈った。無事出て、ほっとした」と安心した様子。大阪市東淀川区の会社員、登島義敬さん(48)は「家族からは搭乗をやめてほしいと何度も言われたが、仕事の都合でどうしても乗らざるを得なかった。不安はあったが、無事着いてよかった」と話した。
一方、大阪府和泉市の会社員、湯浅幸伸さん(39)は「いつもより操縦が慎重な感じがした。乗っている間はずっと不安だった」と率直に話した。また、神奈川県横須賀市の会社員、柳田喜久夫さん(45)は「今回の事故で何かとトラブルが多いボンバルディア機の検査が見直され、安全性が高まるのではないか」と期待を口にした。
高知県や県内の旅行業者からは春休みを前に観光客への影響を懸念する声が広がった。
13日夜に橋本大二郎知事に謝罪した全日空の大前傑(すぐる)副社長はボンバルディア機の就航継続を表明。浜口収・県観光担当理事は「観光シーズンに向け、大打撃。ボンバルディア機が就航する他の都市も同じ懸念があるのでは。高知に来るには飛行機が便利だが、再発防止を誓っても乗客の不安は一掃されないはずだ」と指摘した。
また、高知市内の旅行業者は「団体旅行で、ボンバルディア機を使う大阪行きを取りやめるよう要望があった。他にもキャンセルの相談が数件あり、今後が不安」と深刻な表情。別の旅行代理店の担当者は「機種変更を旅行業者全体で全日空に求める動きが出てくるのではないか」と話した。
【田倉直彦、加藤小夜、矢島弓枝、後藤直義、三上健太郎】
毎日新聞 2007年3月14日 11時15分