これでは国会が笑いものになってしまう。松岡利勝農相の光熱水費問題が発覚して10日たつが、いまだに真相がはっきりしない。私たちは明確な説明を求めてきた。しかし「適切に報告している」と説明拒否を続けている。
国会議員会館の事務所の光熱水費は公費で負担されており、無料だ。それにもかかわらず松岡氏の事務所の光熱水費は、5年間で約2880万円の支出があったと政治資金収支報告書に記載された。
誰が見ても常識はずれの金額である。何も説明されなければ、後ろめたい金を領収書の添付が必要ない光熱水費の費目に付け替えたとの疑念が生じるのは自然だ。
安倍晋三首相も「いわば法律の求めるところに従って農相は報告している」と松岡氏をかばい続けている。
「ナントカ還元水のようなもの」「今は水道水を飲んでいる人はいないでしょう」。野党もこんな松岡氏ののらりくらりの発言にかわされて、国会の無力さが浮き彫りになっている。
今のままでは統一地方選や参院選を前にして、国民の政治への信頼は大きく失墜してしまう。
さすがに自民党内からも批判の声が上がってきた。14日に開かれた首相と当選1回の自民党衆院議員との会合では、「地元の有権者を納得させられない」「東京の水道水はまずくない」などと松岡氏に対する反発が出た。
「職務に専心できるように姿勢を正してがんばっていただきたい」。13日の参院予算委で自民党の山東昭子議員は松岡氏に対していみじくも言った。
農政の停滞は許されない。折しも来日したハワード豪首相と安倍首相との首脳会談で、日豪は経済連携協定(EPA)締結交渉を4月から開始することを合意した。日本の農業に大きな影響を与えるテーマだ。農相が疑惑を抱えたままでは職責を全うできない。
松岡氏が説明拒否を続けるのなら、国会が対応する責務がある。松岡氏は「各党会派(の合意)で公表の扱いが決まればそれに従う」と答弁している。
政治への信頼を取り戻すためにも、公表基準について与野党で一致点を見いだすべきだ。証言拒否ができない証人喚問要求にも与党は応じるべきである。
公明党の北側一雄幹事長は会見で、松岡氏に対して「もう少し誠実に説明してしかるべきだ。説明責任を果たす責任が政治家にはある」と述べた。公明党は真相解明に向けて政府・自民党の重い腰を上げさせ、与党としての存在感を発揮すべきだ。
民主党の責任も大きい。中井洽元法相は議員連盟の会費などを光熱水費に付け替えていたことを明らかにした。虚偽記載を禁じた政治資金規正法に抵触する可能性もある。
中井氏は「領収書もある」と話しており、それを公表しきっちり説明する必要がある。民主党は追及が腰砕けになったら、批判は自らに向けられることを肝に銘じるべきだ。
毎日新聞 2007年3月15日 0時20分