松坂が投じたスライダーに、マーリンズの打者たちは2度、驚かされた。
一回2死一塁、打席に立ったのは4番の右打者、ストークス。カウント2-1から、松坂が投げた5球目は外へ逃げていく130キロのスライダーだった。判定はボールだったが、ストークスは「あの球はジャイロボールだった。打っても、空振りかファウルにしかならない」と真顔で語った。
米メディアの間では「魔球」ジャイロボールとして騒がれているが、スピードが落ちずに打者の手元で急激に変化する松坂のスライダーが、ストークスには見たこともない変化に映ったのだろう。このスライダーの残像が強烈だったのか、ストークスはこの打席を含めて2打席連続で空振り三振に倒れた。
さらに効果的だったのが、右打者の内角へのスライダーだった。二回1死二、三塁のピンチで、カウント2-1から右打者の8番・シーボルに対し、体に当たりそうなところから鋭く曲がって内角をかすめるスライダーを投げ、見逃し三振に抑えた。「ああいうボールも使えるかな、という感じだった」。松坂は結局、予定の3回を被安打2、失点0、奪三振3、四球1に封じた。
マーリンズのキャンプ地、ジュピターでも人気者。立ち見客1500人とにぎわった球場のあちこちから、覚えたてといった感じの日本語で「ダイスケ、頑張れ」の声援が飛んだ。初めて大リーグのチームを相手にしたオープン戦で、観衆の期待に応えた松坂は「(大リーガーに対して)特別な意識はなかった。いつも通りの精神状態で臨んだ」と、さらりと言ってのけた。【高橋秀明】
毎日新聞 2007年3月7日 17時54分