日本詩文書作家協会の創立35周年を記念した「日本の詩歌と書の世界」展が15日まで、東京都中央区銀座2の東京セントラル美術館、東京銀座画廊・美術館で開かれている。
434人が出品。2会場での展示。今回は作品に取り上げる詩文についての範囲が、活躍している人の作品から日本語で書かれたすべての詩文へと広げられたため、例年にも増してバラエティーに富む言葉が会場を彩っている。
特徴的なのは自ら創作した詩文を取り上げた書が目立ったこと。大井錦亭「故郷や蓴(じゅん)のぬめり俳の味」▽大平匡昭(まさあき)「風雪に耐えし地蔵の黒きこけこれも慈悲か」▽室井玄聳(げんしょう)「首かたむけじっと待っている 瞳輝かして待っている……」▽佐伯司朗「さらさらと舞ひ散り落つる桜かな」▽宮本博志「柿若葉いのち満ちたる照り返し」などだ。一書人にとって、かけがえのない主題と向き合った書からは切実な哀歓が伝わってくる。
表現上の工夫も興味深い。中野北溟「入れものがない両手で受ける」(尾崎放哉)=の自在さ。船本芳雲「湯舟にて聴く極上の虫の声」(小沢昭一)の余白の効果。後藤竹清「こんなに美しく可憐(かれん)な花に……」(ジョン・フレッチャー)の柔らかな線。渡部會山「暗い北國の海オリオン星座は……」(伊藤信吉)=の豊かな音楽性。
船本理事長は「金子鴎亭先生は昭和29(1954)年に、近代詩文書が出品作に占める割合は5割を超えたい、と書かれています。現在なお2割台であるのは気がかりです。ただ、作品は精選され、ある一定の水準は確保できるようになりました。メッセージ性のある、さらなる高みを追求していきたい」と話している。【桐山正寿】