【ワシントン=川合智之】オバマ米大統領は21日、中国との原子力協力協定の改定に同意した。米議会の承認を経て発効する。米国製の原子力発電所の対中輸出を拡大することで自国の原子力産業を支援するほか、世界最大の温暖化ガス排出国の中国に排出減を促す。
米ホワイトハウスが発表した。協定は核不拡散と原子力の平和利用の枠組みに基づき、原子炉などの機器や設備、核物質、核技術などの輸出を認める。オバマ氏は米議会への書簡で「合意はすべての適用法令を満たし、核不拡散や外交的利益を促す」と評価した。
現行の協定は1985年に発効したが、89年の天安門事件を機に凍結した。中国がイランなど非核保有国に技術供与している疑いも浮上して凍結が長引いた。中国がイランへの核技術協力を停止したことなどで、98年に凍結を解除。発効30年後の2015年12月に期限を迎えることになっていた。
中国の習近平国家主席は昨年11月のオバマ氏との首脳会談で、30年ごろをピークに二酸化炭素(CO2)排出を減らす目標を打ち出した。運転中に温暖化ガスを出さない原発の利用を拡大し、増大する電力需要をまかなうとともに、石炭発電による大気汚染を改善する。
中国は原発27基を運転している。さらに23基を建設中で、このうち4基は東芝傘下の米ウエスチングハウス(WH)の原発「AP1000」。米はさらに原発の対中輸出を拡大し、米原子力産業を後押しする。
現行の日米原子力協定も18年に失効するため、改定交渉が本格化する。使用済み核燃料の再処理方針などを巡って議論が交わされそうだ。