リチャード・ブランソン氏率いる英ヴァージングループの宇宙ベンチャー企業ヴァージンギャラクティックは、年内に新しい宇宙船の試験飛行を始めたいと考えている。同社のジョージ・ホワイトサイズ最高経営責任者(CEO)が、死者を出した昨年の墜落事故以来、数少ない公のコメントで明らかにした。
ヴァージンギャラクティックのホワイトサイズCEO(中央)。新たな開発拠点の開設式で(3月7日、カリフォルニア州ロングビーチ)=ロイター
ホワイトサイズ氏は、墜落事故から学んだ教訓のおかげで宇宙船はより良いものになると述べた。昨年の事故は、宇宙船が上昇している途中で機体の下降速度を落とす装置のロックが解除された時に起きた。
だが、ホワイトサイズ氏はコロラドスプリングズで行われた年次会議「宇宙シンポジウム」での講演で、米運輸安全委員会(NTSB)の調査結果に関する詳細は明かさなかった。
昨年10月31日の墜落事故では、副操縦士のマイケル・オルズベリー氏が死亡し、操縦士のピーター・シーボルト氏が重傷を負った。ブランソン氏は事故以降、ヴァージンは有償で旅客を宇宙へ運ぶ取り組みを推し進めるとしていた。
宇宙船は従来型の航空機で大気圏上層部まで運ばれ、そこで空中に放たれ、宇宙の端に向けて出力を上げる仕組みだ。
「皆さんにお伝えしたい最初のメッセージは、我々は順調に前進しているということだ」とホワイトサイズ氏は述べた。「チームはうまくやっていて、一つの峠を越した。それが2機目の宇宙船だ」
ホワイトサイズ氏いわく、ヴァージンギャラクティックは宇宙産業の多くの人が苦しんだ経験を経た。「突き詰めると、そのために、より良い宇宙船を持つことになる」と同氏は述べた。
■宇宙飛行を待つ700人
同社は年内に宇宙船をテストし始めることを目指している。ホワイトサイズ氏は宇宙飛行のために頭金を払った顧客に言及し、「まだ飛行を望んでいる人がざっと700人いる」と語った。「私の見るところ、物事は良い形で前進している。心強い展開だ」
ヴァージンの宇宙弾道飛行プログラムの将来は、NTSBの調査結果に左右される可能性が高い。NTSBは事故の数日後に出した予備報告書以降、墜落事故についてほとんど何も述べていない。事故原因の調査のために、機体に搭載された装置から地球に送られた大量のデータにアクセスできる。
NTSBの方針では、調査案件となる事故が起きた場合、発生から1年以内に最終報告を出すことになっている。
米カリフォルニア州の砂漠に墜落した米ヴァージンギャラクティックの宇宙船試験機の破片を調査する専門家ら=米運輸安全委員会提供/共同
たった1つのミス――レバーを引き、「フェザリング」機構のロックを解除したこと――がなぜ墜落事故を引き起こせたのかという重要な問題について、NTSBが何を推奨するかはまだ分からない。
宇宙船の安全システムでは、通常、人的ミスであれ機械の故障であれ、機体が少なくとも2件の別々のミスに耐えられることが義務づけられている。
By Robert Wright in Colorado Springs
(2015年4月21日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
(翻訳協力 JBpress)
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