ホクレン農業協同組合連合会(札幌市)など全国の農協や乳業販売者らで構成するJミルク(東京・中央)は25日、2015年度末の国内バター在庫が前年度比4割減の1万700トンになるとの見通しを公表した。原料となる生乳が足りないためで、年間で7100トンが不足するとみている。政府は追加輸入で不足分を補うことを検討している。
バターは乳業大手が4月から3~4%を中心に値上げしたが、スーパーは「1人1個まで」の制限をかける店がまだ多い。パンやケーキ店が使う業務用も「必要量を仕入れるのが難しい」(商社)。Jミルクは15年度の需要量が前年度比0.9%増の7万4700トンになると見込む。綱渡りの供給が続く。
バターの国内生産は前年度比5.2%増の6万4800トンと想定するが、それでも需要を賄うことはできない。
国内生産が拡大するというシナリオも、牛乳の需要に左右される。牛からしぼった生乳はまず牛乳として販売し、残った量がバターや脱脂粉乳などの加工向けに回る。少子化などで牛乳消費は年間1%ほど落ちこんできたので、15年度も牛乳の需要が減って原料がバターに回るとの前提だ。
ただ、気温が高くなると牛乳消費は伸びるほか、4月時点では牛乳を値上げしても販売はあまり落ちていない。想定どおりにバター向けの生乳が確保できるかリスクもある。
そもそも生乳の生産量は足りていない。10年前には全国で年間829万トンあったが、14年度には12%減の733万トンに縮小した。Jミルクは15年度も横ばいとみる。
日本の高度成長期からバブル期に建てた牛舎は老朽化しているが、酪農で最新の設備を導入するには1億円以上かかるといわれる。他の農業に比べて投資額がかさむケースが多く、廃業する酪農家が増えている。
国は若手の酪農家を増やそうと「畜産クラスター事業」など予算面の支援を強化しているが、効果が出るまでには時間がかかる。
ひとまず国内で必要なバターを確保するには、国家貿易として規制しているバターの輸入がカギを握る。14年度は政府が追加輸入も決め、バター1万2900トンをニュージーランドなどから調達した。15年度は7月までに輸入する2800トンしか決まっていない。政府は追加輸入で対応する考えで、今月末までに具体的な輸入量を詰めるとみられる。