【北京=大越匡洋】中国政府は1日から衣料品や紙おむつなど日用品の一部の輸入関税をほぼ半分に引き下げた。中国で販売している輸入品の値下げを促し、中国人が日本など海外で大量に買い物をするのを抑え、景気が減速する国内に消費を呼び戻す狙いだ。海外製品の値段の高さや偽物の横行への不満を鎮めたいとの思惑もある。関税引き下げは日本企業の輸出拡大にもつながりそうだ。
毛皮の衣料品は23%から10%に、ウールのコートは16%から8%に関税を引き下げる。靴やスーツ、スキンケア用品なども引き下げの対象だ。日本製品が人気の紙おむつの関税も7.5%から2%に引き下げる。
中国財政省は「多様化する消費者のニーズを満足させる」と説明した。今後も引き下げ対象を拡大していく見通しだ。中国では高級輸入品を中心に高い関税がかかり、人気ブランド品などの価格の高さに対する庶民の不満はかねて強い。
特に円安が進む日本での買い物の割安感が強まった。中国人が大量の買い物などで海外で使うお金が増え、昨年の旅行収支は1千億ドル超の赤字と、赤字幅が前年より4割拡大した。中国からみれば、国内の需要が海外に漏れ出ている格好だ。
中国指導部は経済の安定成長に向けて国内の個人消費の底上げをめざしている。今回の関税引き下げも、強さを増す中国人の購買力を国内市場に呼び戻す施策の一環だ。関税が引き下げられれば、国外で買い物をする富裕層以外の中国国民も日本製品を買いやすくなる。日本企業にとって商機となる。
香港では中国本土からの旅行客が紙おむつや粉ミルクを買い占めることに反対運動まで起きている。中国社会に対立感情を生む一因になっており、中国指導部は社会の調和を確保するためにも内外価格差の縮小に取り組む必要に迫られている。