政府の知的財産戦略本部(本部長・安倍晋三首相)は19日午前の会議で「知的財産推進計画2015」を決めた。安倍政権が掲げる地方創生を後押しするため、大企業などが持つ特許を地方の中小企業が活用できるように各地で専門家の助言体制を整備する。製造技術などの証拠収集の困難さが指摘される特許訴訟では被害の立証をしやすくする制度改正を促す。
安倍晋三首相は会議で「高度な技術、豊かな文化コンテンツなど我が国の知的財産を活用し、国家競争力を高め、成長を確かなものとするよう政府一丸で知財戦略を進めていく」と述べた。
計画は(1)地方における知財活用の推進(2)知財紛争処理システムの活性化(3)コンテンツや周辺産業の一体的な海外展開――の3本柱。月末にまとめる成長戦略に反映する。
各地の自治体などに企業経営の経験者らを配置し、大企業や大学などが使わない「休眠特許」の中小企業の活用を促す。自治体や中小企業支援団体は、専門家の配置に財政的な支援を行う。
国内では現在、登録されている特許全体の半分に当たる約70万件が利用されていない。保有する特許の実施率を見ると、中小企業の66%に比べ、大企業は35%と低い。
知財紛争の仕組みも改善する。特許訴訟では原告側が被告側の工場内にある製造技術など証拠を集めるのは難しい。立証をしやすくするため、特許を侵害したとされる側が訴訟に必要な証拠文書を提出しない場合に罰則の導入などを検討する。
日本は権利侵害の損害賠償額が少ないとの指摘があり、ビジネスの実態を反映して引き上げを検討する。東京や大阪に集中する知財訴訟を地方の中小も活用できるようにテレビ会議システムの利用を裁判所に促す。
権利者が多い著作物の2次利用をしやすくするため、16年通常国会に著作権法改正案を提出する。国立国会図書館やNHKなど信用力のある利用者を対象に、確認できない権利者への補償金を今の前払いから後払いにする。2次利用の簡素化で番組の輸出やネット配信を後押しする。
特許審査の迅速化に向け、権利化までの審査期間を短縮する。教科書検定制度におけるデジタル教科書の位置づけは16年度までに検討し、必要な措置を講じるとした。仕事上の発明の特許を「会社のもの」とする今国会提出済みの特許法改正案を踏まえ、経営者と従業員が取り決める社内規定に関するガイドラインを策定する。