東日本大震災の発生後、津波で寸断された道路や橋などインフラ復旧の司令塔となった国土交通省東北地方整備局(仙台市)の「災害対策室」を震災遺構として移設保存する案が浮上している。移設先は岩手県陸前高田市に整備される予定の復興祈念公園内が有力で、防災教育への活用も検討されているという。
災害対策室は、東北自動車道など南北の幹線道路の通行をまず確保し、次に沿岸に向かう東西の道路を順次復旧させる「くしの歯作戦」を指揮した。この作戦は救援活動に当たる自衛隊などの迅速な被災地入りにつながったと評価されている。
9月、復興祈念公園に設ける伝承施設の整備方針を話し合う有識者委員会で提案された。東北地方整備局は、庁舎の老朽化に伴い今月、仙台市内の別の場所に移転。震災当時の災害対策室は使われなくなる。
室内には、関係機関とのテレビ会議や管内の被害状況を映す大小のモニターが壁一面に並ぶほか、通信機器や円卓がほぼ当時のまま置かれている。2011年3月11日から1日最大100人以上が詰め、インフラの復旧対策に当たった。
移転先に挙がる陸前高田市の復興祈念公園は、奇跡の一本松や、津波で被災し震災遺構として保存する「道の駅高田松原」などと一体的に国営追悼施設を整備し、21年3月に完成予定だ。〔共同〕