1966年に発表、翌年舞台化された「華岡青洲の妻」の稽古場を訪れた有吉佐和子(31~84)
■文豪の朗読
《有吉佐和子が読む「華岡青洲の妻」 木内昇が聴く》
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戦後の女性について、有吉佐和子はこう語っている。「幸福を追い求める姿勢に厳しさがたりない」。1960年代流行したコピーに、「家付きカー付き婆(ばばあ)抜き」がある。マイホームに車持ちだが姑(しゅうとめ)はいない環境が、望ましい結婚という風潮だ。有吉は「一概に女の一生はこうあるべきだとは言えない」としながらも、果たして「楽」をした先に「幸福」が待っているのだろうか、と疑問を投げかける。
『華岡青洲の妻』は、嫁姑の確執を扱った物語だ。才色の誉れ高い於継(おつぎ)に幼い頃より憧れ、その長男である青洲(せいしゅう)のもとへ嫁いだ加恵。当初は良好だった嫁姑の関係は、医者としての修業を終え実家に戻った青洲を巡り、変じていく。彼を真に支えるのは、母か嫁か。女の意地がぶつかり合うのだ。
朗読されるのは、青洲が開発し…