国土交通省は20日、不適切な整備を行ったとして、国際貨物専門の日本貨物航空(NCA、千葉県成田市)に事業改善命令を出した。大鹿仁史社長は同日会見し、「最大の使命である安全運航に影響を及ぼしかねない法令違反があった」と述べ、謝罪した。
国交省や同社によると、航空法に違反する不適切な整備が2013年8月から今年5月まで、所有する全11機中5機で行われていた。
昨年1月、シカゴ発の便が鳥と衝突して機体に損傷を負ったが、必要な修理をせずに運航を続けた。他にも、操縦機能の試験を資格のない従業員だけで行うなど計9件の整備に関する航空法違反があった。
うち3機では整備記録の改ざんもあった。タイヤの空気圧について虚偽の値を記載し必要な再点検を実施しない▽翼の部品に潤滑油を補給する際に補給量を改ざん▽落雷でできた機体のへこみを測定せず虚偽の数値を記録――というケースがあった。整備士の一部は社内調査に「経験上安全に影響はないと思った」と話しているという。
今年4月、提携先の指摘で過去の不適切な整備が発覚し、社内で調査したところ、違法な整備が複数判明した。国交省の立ち入り検査で、さらに記録の改ざんも明らかになったという。
安全に関わる違法行為が重なったことから、国交省は事業改善命令と併せ、機体ごとに国が安全性を確認して交付する「耐空証明」の同社への交付条件も厳しくした。同社はこれまで原則有効期限1年の証明を毎年取得することを免除されていたが、今後は毎年の取得が必要となる。
同社は米国や中国など7カ国で航空貨物で1~2割のシェアを持ち、半導体製造設備や航空エンジンなど大型貨物を中心に年間約55万6千トンを輸出入している。不正発覚を受け今年6月に全11機の運航を中止。20日現在で運航しているのは2機にとどまり、物流への影響が続いている。(伊藤嘉孝、北見英城)