高校野球の南・北大阪大会は21日、3回戦15試合があった。土壇場での逆転、息詰まる投手戦、サヨナラ劇――互いに譲らぬ球児の思いが球夏を盛り上げている。一方、熱中症対策として、この日から通常の5回終了時の休憩に加え、3回と7回終了時にも給水の時間が設けられた。
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地方大会の熱中症対策呼びかけ 朝日新聞社と日本高野連
(履正社5―1汎愛)
汎愛のエース羽田野温生(はるき)君(3年)にとって、悔いの残る1球となった。
1―1の同点で迎えた八回裏1死一、二塁。打席には履正社の4番、白瀧恵汰君(3年)。フルカウントからの7球目、一番自信がある直球で勝負した。しかし、「四球にしたくないと思って甘くなってしまった」。内角高めを鋭く振り抜かれると、打球は右翼フェンスを越えた。勝ち越し3点本塁打。悠然とベースを回る白瀧君を、ぼうぜんと立ち尽くして見送った。
3年間、この試合で投げるのを待ちわびてきた。
身長187センチの大型右腕。高校進学時には府内外の強豪私立から誘いを受けたが、「公立に入って、強豪私立を倒して甲子園に行きたい」と汎愛を選んだ。練習ではいつも、履正社や大阪桐蔭をどう抑えるかを意識しながら、直球を最速147キロまで磨き上げた。
今春に右ひじを痛め、「状態は80~90%くらい」。しかしこの試合、直球とスライダーを効果的に使って打者に的を絞らせなかった。四回表に自分のバットで先取点を奪うとさらに勢いに乗り、点を失った六回と八回以外は三塁を踏ませなかった。
ずっと意識してきた履正社を相手に、ベストに近い投球はできた。それでも、勝利に少しだけ届かなかった。「最後は力負け。これが履正社との差だと思います」。試合が終わった瞬間は、涙は出なかった。球場の外で仲間に囲まれると、その場で崩れ落ちて泣いた。(遠藤隆史)