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週刊少年ジャンプが創刊50周年を迎え、中野博之編集長(40)にインタビューした。「友情、努力、勝利」の三原則は今も絶対なのか? 「アンケート至上主義」がもたらした弊害はないのか?
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――50周年を迎えました
「2017年に編集長に就任し、50周年の節目が来ると意識してきました。とはいえ、実際は毎週毎週の誌面づくりに精いっぱい。漫画家さんも編集者も、先のことよりも今週の人気をいかに取れるかが重要です。50周年の記念号もあまり普段と変わりませんでしたね」
7月14日発売の週刊少年ジャンプ創刊50周年記念号(集英社提供)
「ただ、様々な記念企画を実施したことで、年配の方から『久しぶりにジャンプを読んだよ』との声をもらいました。この50年で、多くの方の青春にジャンプがあったのだと改めて実感しました。私自身も『キン肉マン』や『キャプテン翼』をきっかけにジャンプを読み始めた世代です」
――ライバルはやはり「マガジン」「サンデー」ですか?
「両誌に面白い作品が掲載されるともちろん嫉妬し、編集部員にハッパもかけます。でもライバルというよりも、雑誌が厳しい時代の中で共に面白い漫画を生み出す仲間だと思っています。むしろライバルは『YouTube』です」
「週刊少年漫画誌は、かつては一番安く、一番スピード感のあるエンタメコンテンツでした。でもより安くより早いネット時代の今、子供たちは雑誌の発売日を待つ、アニメの放送時間を待つといった習慣がなくなりつつあります。これまでの週刊誌の強さにあぐらをかいていた部分がなかったとは言い切れません。毎日更新のWEB漫画誌『ジャンプ+』を2014年から始めるなど、試行錯誤を続けています」
――出版不況の中で、ジャンプの部数も低下傾向です。
「5年前、作家さんたちが集まる会合の場で『ジャンプの基礎部数が上がるまでは大好きなビールを断ちます』と宣言しました。残念ながら、そこから断酒生活が続いています。今回の50周年記念号や、16年のこち亀連載最終号など大きく部数を伸ばした号はありますが、基礎部数を上げるのはなかなか簡単ではありません」
「紙へのこだわりがあるので変化は寂しいですが、雑誌を買わなくてもスマホで漫画を読む人は増えています。部数も大事ですが、一番は作品というコンテンツを広げること。実際、『ワンピース』や『僕のヒーローアカデミア』などの現在の連載作品は海外のアニメイベントで大きく紹介され、ジャンプが黄金期と呼ばれていた頃の作品以上に大きく広がっていると実感しています。過去の653万部というのはすごい数字ですが、部数が減っているからといって今がその時に負けているとは思っていません」
漫画雑誌史上最高の653万部を記録した1994年発行の週刊少年ジャンプ=集英社提供
――ジャンプは後発誌ゆえに新人発掘で育ってきました。新人発掘は今も変わりませんか?
「そこは揺るぎないですね。新人が一番大事と教育されてきましたし、実際に新人が育つことでヒットするという事例が繰り返されてきましたから」
――話題性だけで言えば、かつての人気作家に描いてもらう方がありそうですが。
「今回50周年でレジェンド作家さんにも描いてもらっているのですが、編集部で意見が一致したのは、続編や番外編ではなく新作を描いてもらうことです。『こち亀』だけは例外ですが(笑い)」
「新作は赤点評価になる可能性もありますが、120点を取る可能性もあります。僕ら編集は、60点、70点の作品よりもやはり120点の作品が見たいのです」
――二次創作市場が広がったことや、ネット上に作品を発表できるようになったことで、商業デビューをしない人も増えています。
「そこはまさに大きな課題です。今のところ編集部に漫画を持ち込んでくれる人はそれほど減ってはいませんが、ネットに作品を発表することで満足して商業的に漫画を描かない作家さんが増えているとは実感しています。ジャンプの編集部はしっかりボツを言いますので、ジャンプの編集部は口出しするというイメージも世間には強いです」
「今まではジャンプでござい、漫画家になるならジャンプだよねという気持ちはどこかにあったと思います。そういう気持ちは捨てて、編集の力であるとか、過去50年のデータや知識、大手出版社の商業誌ならではのメリットをしっかり提示していかないといけないと思っています」
1968年の少年ジャンプ創刊号=集英社提供
「従来の漫画賞に加え、今年からスマホで読むことを前提にした『縦スクロール漫画賞』、冒頭部分の描き出しだけを対象にツイッターでも投稿可能な『ジャンプスタートダッシュ漫画賞』を新設しました。何としても新しい才能に出会いたいのです」
――ジャンプと言えば「友情、努力、勝利」の三大原則が有名です。
「昔は確かにそれが言われていたみたいです。ただ僕は00年の入社からジャンプ編集部にいますが、その三原則はそんなに強く言われていないですね。今のスタッフはそんなに気にしていません。三原則が入っていないからこの漫画はダメだ、ということはありません」
「ただ、少年誌であるということは意識しています。例えばおじさんが主人公で人生の機微を描く作品となると、面白くても『少年漫画ではないからボツだ』とは言います。少年漫画とは何かと突き詰めて考えていくと、『友情、努力、勝利』のどれかが入るのかもしれません」
――「友情、努力、勝利」に代わる今のキーワードはあるのでしょうか?
「やはりキャラクターの魅力でしょうね。デジタル時代で、世界に向けて発信するとなった時、最後はキャラクター次第だと思います」
「実は『ドラゴンボール』や『ナルト』に比べて、『ワンピース』は海外で人気に火がつくのがちょっと遅かったんです。スーパーサイヤ人の悟空や、うずまきナルトが髪の毛が黄色なのに対して、ルフィは黒髪だから海外受けが悪いのかもなんて言われていましたが、後にしっかりとワンピースも人気が出ました。キャラの魅力があれば大丈夫とルフィが証明してくれました」
――三原則のほかに、「アンケ…