福島県相馬双葉地方の伝統行事で国指定重要無形民俗文化財の相馬野馬追(のまおい)が28日、開幕した。東京電力福島第一原発事故に伴う避難指示が一部を除いて昨年3月に解除された浪江町で、騎馬武者行列が8年ぶりに再開した。30日まで。
旧相馬中村藩の領地で行われる相馬野馬追には「郷(ごう)」と呼ばれる五つの地域から騎馬武者たちが列をなす。昨年は南相馬市小高(おだか)区で小高郷の騎馬武者行列が7年ぶりに復活。今回、双葉地方北部の標葉(しねは)郷が浪江町で再開したことで、東日本大震災後、初めて五つの郷すべてで行列が展開される。
28日朝、JR浪江駅近くの公園に武者姿の人々が集まり、出陣。55頭ほどの馬と騎馬武者たちが町の中心市街地約1キロを勇壮に練り歩いた。標葉郷の騎馬武者の幹部を務める阿部雅彦さん(58)は「威風堂々と行列を進めることで、被災地を勇気づけることができたら」と話した。
震災前は人口約2万1千人の町だったが、6月末現在の居住者は777人。沿道では、帰還した住民や避難先から訪れた人たちが盛んに拍手を送っていた。(江川慎太郎)