古酒の入った甕を前に仕次について語る新屋敷彦二さん。甕には、銘柄や何年に入れたかを記した札が下がっている=2018年7月5日午後7時42分、那覇市、伊東聖撮影
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年月が経てば経つほどおいしくなると言われる泡盛。古酒(クース)の名で知られるが、おいしい古酒を造るには、ただ長年置いておけば良いわけではない。一工夫が必要で、その「秘法」である「仕次(しつぎ)」が沖縄で注目されている。
「お、これはうまいね」「ついでから時間を置くと、しに(とっても)化けるね」
7月上旬、那覇市の公務員新屋敷(しんやしき)彦二さん(59)宅に、同世代の男性たちが集まった。新屋敷さんは古酒造りが趣味。年に数回、泡盛好きを集めて、古酒を味わう場を設ける。
この日も、甕(かめ)からくみ出した貴重な数種類の古酒を、猪口(ちょこ)についで味わい、銘柄や熟成度、ついでから時間を置くと変わる香りなどを語り合い、味わった。
沖縄では、子どもの入学祝いや新居の棟上げ式などの節目を記念して、泡盛の古酒を造り始める風習がある。新屋敷さんもマンションの購入を機に、古酒造りを開始。甕を買い集め、那覇市の酒造会社のものを中心に各地の銘柄を集めた。今では一升瓶で計400本分の古酒が入った多くの甕が、マンションのいろんな部屋に所狭しと並ぶ。最も古いのは三十数年ものだ。
伝統的な仕次方法
古酒造りのコツは、本や講習会で学んだ。そこで知ったのが仕次だ。例えば瑞泉という銘柄だけで、30年もの▽25年もの▽20年もの――の3種類の甕と、さらに買い置きした新酒の瓶がある。30年ものを一定量飲むと、25年ものを30年ものに、さらに20年ものを25年ものにつぎ足す。最後に数年置いた新酒を20年ものにつぎ足すという。
新屋敷さんは、仕次について「時間はかかるが、泡盛が確実においしくなる」と話し、「自分で造ったものが世代を超えて引き継がれていく。お金では買えない。何より、それを、みんなで楽しく飲めるのが一番」と続けて、笑った。
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