人民元の対ドル相場が下がり続けている。3日の上海外国為替市場では一時、1ドル=6・89元と、事実上の元切り下げで起きた「チャイナ・ショック」で2016年末から17年初につけた1ドル=6・96元に迫る低水準だ。現時点で、中国人民銀行は静観を続けている。
元の下落が始まったのは6月半ば。米国が減税による好景気で引き続き利上げが予想される一方、中国は預金準備率を引き下げ、財政出動を強化する緩和的政策をとり始めたためだ。米中貿易摩擦の激化で、中国の貿易黒字が減るとみられることも一因だ。6月半ばからの対ドル相場の下落率は8%近くになった。
しかし、15年8月にあった事実上の元切り下げを発端に、17年初まで進んだ大幅な元安へ、大規模な為替介入で対抗した人民銀は今のところ、相場を市場の流れに任せている。営業日ごとに設定する取引の基準となる中間値を調整し、元安に歯止めをかけることもしていない。
背景には、消費に支えられた経済の堅調さや、元安に伴う資本流出がみられないことがある。
15~17年に進んだ元安は急激な資本流出を伴い、当局による元買いもあって、外貨準備が急激に減少。中国経済への悲観的見方に拍車をかけた。一方、今年6月の外貨準備は3兆1121億ドル(約347兆5千億円)で、前月から15億ドル増えた。企業の外国投資を規制していることが功を奏した形だ。
米中貿易摩擦で米国からかけられた、輸出への高関税の影響がそがれる効果も意識しているとみられる。(北京=福田直之)