「車の顔」と言われるフロントグリル。その美しさを生み出すため、目に見えないほどの凹凸も磨きあげる職人がいます。
豊田合成 金型設備製造部 中島康博さん(47)
重さ5トンほどの巨大な鉄の塊を前にすると、柔らかな表情が引き締まった。「車の顔」と呼ばれるフロントグリルの金型。表面に彫り込まれた複雑な模様の一筋一筋を指先でなぞり、微妙な凹凸を感じ取っていく。求められる精度は100分の1ミリだ。
「失敗は許されない。力の入れ方や道具のしなり方で削れ具合が変わるから、奥が深いんですよ」。小指すら入らない溝は、「硬いもので触ると削れてしまうし、軟らかすぎると伝わってこない」と、シャープペンシルの芯でなぞって凹凸を確認、手製の竹べらで紙やすりを押し込んで磨き込む。
この金型に樹脂を流し込んでつ…