米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古への移設問題で、反対派の先頭に立ってきた翁長雄志知事(67)が死去した。辺野古の埋め立て承認を県が撤回して工事を止め、秋の知事選で争点にして翁長氏を立てて対抗するという反対派の筋書きは、見直しを迫られる。
沖縄・翁長雄志知事が死去、67歳 がんが肝臓にも転移
【特集】翁長雄志知事
社民党の照屋寛徳衆院議員(沖縄2区)に謝花(じゃはな)喜一郎副知事から訃報(ふほう)が入ったのは、8日午後7時すぎだった。
「とても残念だ」としたうえで、「知事選が前倒しになることを想定し、早急に後継候補を選定しなければならない」と話した。
反対派にとって、知事選は「翁長候補」が大前提だった。政権は今月17日以降、辺野古沿岸部に埋め立て用の土砂を投入する予定。翁長氏はこれに対抗し、先月末に前知事による埋め立て承認を撤回すると表明し、手続きに入っていた矢先だった。
8日午後5時から記者会見した謝花氏は、4日に病室で翁長氏と面会し、がん転移の説明とともに「抗がん剤の投与で、いろいろ状況に変化があるかもしれない。その場合は対応を頼む」と指示を受けていたことを明かした。謝花氏は自らが就いた職務代理について、「原則として長の職務権限の全てに及ぶ」と強調。知事不在でも手続きを進める考えをにじませた。
翁長知事の進退について質問が及ぶと「自ら失職するというようなことは聞いていない」と明確に否定した。復帰の可能性についても「我々は一日も早い回復を期待している」と述べていた。翁長氏抜きには、成り立たない戦略だった。
だが、その記者会見の2時間半後、硬い表情で県庁を出る謝花氏は記者団に「これから病院に行く。現地で会見になると思う」と告げた。
4年前の知事選で「辺野古移設阻止」を掲げて勝利した翁長氏だったが、政権側に押される展開が続いていた。国との裁判に2016年12月の最高裁判決で敗れて以来、現地では工事が着々と進んでいた。
反対派が翁長氏に対応を求めて県庁内で座り込むなど、支持層からの突き上げも激しさを増していた。あまりに早く「撤回」に踏み切ると、国に対抗手段をとられ、選挙前に決着してしまいかねない。タイミングを慎重に図り、土砂投入直前で踏み切ったところだった。承認撤回は、知事選に向けて求心力を回復させるための布石でもあった。
■反対派は厳しい…