京都の夏の夜の風物詩「五山送り火」をめぐり、今は途絶えた「い」の字をともした場所の可能性がある痕跡を発見したと、京都大が8日、発表した。これまで有力とされていた場所とは異なり、今後、詳細な調査が必要、としている。
五山送り火は、「大文字」、「妙法」、「船形」、「左大文字」、「鳥居形」が8月16日にともされる。起源ははっきりしていない。かつては「い」や「一」などもともされていたが、明治時代までには途絶えたとされる。
「い」は従来、詠み継がれている歌がある京都市左京区の向山(標高439メートル)が有力だとされていた。今回、京大霊長類研究所の正高信男教授と京大1回生8人が現地調査したところ、ほかの場所には見られることもある、送り火に使うまきを置くスペースと推定できるような痕跡などが見当たらず、五山に共通して存在する社寺もなかったという。
周囲の山を調べたところ、向山から北東に約1キロメートルの通称「安養寺山」(同391メートル)の標高100メートル以上上がったところに、山肌を削ってつくられたとみられる平らな地形を3カ所発見。まきを置くスペースに似ているという。寺の痕跡のような石積みも見つかった。
チームは今後、寺の資料探しや住民の伝承集めを進める。
送り火に詳しい京都精華大の小椋純一教授は「同じような地形はほかの山にも見られ、それだけで送り火の跡とするには飛躍がある」と話し、別の用途や、ほかの文字をともした可能性を指摘している。(野中良祐)