昨年11月に日本を発ち、今年3月に南極から帰国した愛知教育大教授の戸田茂さん(51)が今月、子どもたちに南極の魅力と体験を伝える教室を開く。高校時代から行きたいと思い、南極地域観測隊員となった戸田さん。「誰にでも行くチャンスはあります。面白いですよ」と話す。
第59次の地域観測隊員の戸田さんは昨年12月~今年2月、日本から1万4千キロ以上離れた南極にいた。日本など遠くで起きた地震が南極まで地球の内側をどう伝わるのか、深さ2900キロのマントルと核の境目がどんな構造か、地震計で調べるのが一つの任務だ。1999年に初めて訪れてから、4度目の南極だ。
高校時代に映画「南極物語」を見て南極にあこがれ、京都大学大学院で応用地球物理学を学んだ。勤務する愛教大では地震学を専門としている。
地球を知る「かけら」探る
「南極調査は直ちに社会に還元できるものや実益を見いだすのは難しいかもしれない」と戸田さん。だが、南極には「地球を知るためのピース(ひとかけら)」があるという。「私たちはなぜここにいるのか、地球はどうなるか。そのピースを探し当て少しずつ明らかにしたい」
南半球のため、戸田さんが滞在した当時の季節は夏。日中は昭和基地で気温が0度前後で、山ではマイナス20度を下回り、氷の斜面を冷たい強風「カタバ風」が吹き下ろす。風速30メートル超のブリザードが吹き荒れることもある。
10年前に昭和基地から約170キロ離れた山「ボツンヌーテン」に置いた地震計を回収しようとしたが、積雪が深く発見できなかった。「やろうと思ったことの7割できればいい」「南極は逃げない。またやればいい」。命を落としかねない現場だ。隊員の間で語られてきた言葉を胸に刻み、無理な判断はしなかった。
厳しさだけではなく、美しさをのぞかせるのも南極だという。「夜は夕焼けのような状態が続き、吹雪が吹けばキラキラと反射してきれいなんです」。戸田さんは、そんな南極の姿や体験を子どもたちに知ってほしいという。
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戸田さんが講演する「南極教室」は26日、名古屋港ポートビル(名古屋市港区)である。対象は小学4年以上。参加費500円。申し込みは16日まで。往復はがきか、メール(portevent@nagoyaminato.or.jp)。問い合わせは南極教室担当(052・652・1111)。(斉藤佑介)