信州総文祭の郷土芸能部門で、長野県阿南町の阿南高校郷土芸能同好会が地元に残る豊作祈願の祭り「新野(にいの)の雪祭り」を披露した。結成わずか3年ながら、地元は若い世代へ祭りを継承する契機になると期待を寄せている。
伊那文化会館(同県伊那市)の舞台に、太鼓や笛の音が響く。面をつけた神様「幸法(さいほう)」役の奥田裕貴さん(3年)が、右手に松、左手にうちわを持ち、豊作を願う舞を全身で表現した。奥田さんは「緊張したが、練習の成果を発揮できた」と満足げに汗をぬぐった。
この祭りは室町時代に起源があるとされ、国の重要無形民俗文化財に指定されている。寒さが厳しい毎年1月に同町新野地区で夜通し催され、県内外から多くの観光客が訪れる。
奥田さんも幼い頃から両親に連れられてこの祭りを見て育った。幸法役は、経験を積み認められた演者が務めるもの。いつかは本番で、と夢見る。「自然豊かなこの町が大好き。伝統を受け継ぐ役割を担いたい」
同好会は2015年、この郷土芸能を学ぼうと結成された。今はメンバー13人が、祭り保存会から指導を受けながら活動している。卒業後に祭りに関わるメンバーも出ている。
保存会会長の勝野喜代始(きよし)さん(65)は「子どもが減り、祭りが続けられるのかという危機感がある。同好会をきっかけに、人材が育まれればありがたい」。(森本未紀)