性表現の歴史について研究した本を北海道が有害図書に指定した際、指定を決めた道の審議会の部会が、道文書管理規程に反して会議の議事録を残していなかったことがわかった。北海道が朝日新聞の取材に対し、明らかにした。市民が行政による表現規制の妥当性を検証するための手がかりとなる公文書が存在しないことになる。識者からは疑問の声が上がっている。
タイトルに「エロ」の書籍、相次ぎ有害指定 研究書も
教育、報道関係者ら6人でつくる北海道青少年健全育成審議会の社会環境整備部会は3月、非公開で約1時間の会合を開き、ライターの稀見理都(きみりと)さんが漫画における性器の描き方などをたどった「エロマンガ表現史」(太田出版)を18歳未満への販売を禁止する有害図書に指定した。
北海道青少年健全育成条例に基づく「青少年の健全な育成を害するおそれがある」との判断で、書店などでの陳列も一般書籍とは区別される。性的行為を描いた漫画などの引用を含むことが問題視されたとみられる。指定後には、研究書まで対象にするのはやり過ぎだとの批判も出た。
そこで、具体的にどんな議論があったのかをたどろうと朝日新聞が議事録を情報公開請求したところ、審議会を担当する道民生活課は「議事録を取っていない」と説明した。道文書管理規程は「意思決定に関する事項について適切に文書を作成しなければならない」と定めている。道法制文書課によると、部会は規程が対象とする「付属機関その他道の重要な政策事項に係る会議の開催」に該当するため、議事録を作成する必要があった。
だが、「少なくともこの数年は…