西日本を襲った豪雨による浸水は、被災家庭にあった絵画や写真を泥まみれにした。思い出や記憶が詰まった大切な品を元の姿に戻す手助けをしようと、岡山市の「絵画修復士」が被災地で活動している。
今月3日、岡山県倉敷市西岡にある寺「龍昌院」の一室で、今村友紀さん(37)が一枚の絵と向き合った。大規模浸水の被害に遭った同市真備地区で水につかった仏の絵画。乾かしても、表面は青カビに覆われていた。
今村さんは掃くように細かく筆を動かした。抹茶粉のように浮かんできた青カビを、吸引機で吸い込むと、輪郭と色が次第によみがえってきた。さらに湿った和紙で泥を吸い取り、カビの生えた裏打ち紙をはがす。殺菌して紙を伸ばし、依頼者に返す段取りだ。
イタリア・フィレンツェの専門学校で絵の損傷を補修する技術などを学び、絵画修復技師の認定を受けた。帰国後、岡山市内で工房を立ち上げ、美術館や画廊、個人が所有する油絵や額縁を修復している。
7月の豪雨の後、家庭にあった絵や書、写真などの多くが捨てられていった。熊本県出身の今村さんには「熊本地震の時に何もできなかった」という思いもあり、今回は自分の技術を役立てたいと考えたという。
工房の同僚で、やはりイタリア…