海に囲まれた兵庫県の淡路島に、魚釣りに関するあらゆる古書を集めた私設図書館がある。300年以上前に英国で出版された釣りのバイブルから、江戸時代の武士が書いた指南書まで、約8500冊。元銀行員のベテラン釣り師が20年余りかけて集めてきた。
青々とした田んぼが広がる洲本市の田園地帯に、木造平屋の瓦ぶきの古民家がある。約15平方メートルの書斎や廊下に並ぶ本棚に、日に焼けて古びた本がびっしりと詰まっている。松林真弘さん(60)が自宅に開設した「淡路魚釣り文庫」だ。
松林さんが本格的に釣りの古書集めを始めたのは、地方銀行の東京支店に勤めていた1990年代前半。バブル崩壊直後で、不良債権の回収を担当していた。仕事からの現実逃避として、磯釣りや渓流釣りにのめりこんだ。「仕事のつらさを唯一忘れさせてくれたのが釣りだった」
荒天の日は釣りの本を手に取っ…