波聞風問
2年前、パリのオルセー美術館を訪ねたとき、日本の美術館では見慣れない光景を目にした。マネの代表作の一つ「笛を吹く少年」の前で、小学生十数人が床に腰を下ろしていた。先生らしき人が話しかけている。しばらくすると、子どもたちが次々と話し始めた。どうやら絵の感想を語り合っているようだった。
日本ではこうはいかない。美術品は、静かに鑑賞するべきもの。何人かがしゃべり始めようものなら、しかられるだろうし、小さい子どもも、あまり歓迎されない。鑑賞会でも、学芸員の説明を一方的に聞くことが多いだろう。
オルセーでの光景を思い出したのは、関西経済同友会が今秋、会員企業が所蔵する絵画を持ち寄って展覧会を開き、小学生を招待するという話を聞いたからだ。しかも、オルセーで見たような「対話型鑑賞会」を開くという。
美術鑑賞・教育といえば、作品にまつわる情報、時代背景や技法などが重視される。いわば「この絵はこう見なさい」という一方的な教えだ。
対話型は違う。ナビゲーターとともに、絵から何を感じるかを考える。直感力や、それを感じた根拠を説明できる表現力が求められる。他者の感想も聞く。異なる意見をどう受け止めるか。彼らとどう対話するか。コミュニケーションの基礎である。
この鑑賞法は1991年、ニュ…