沖縄戦で戦死した日本軍の兵士の遺品が73年を経て、熊本に住む遺族の元に届いた。激戦の地で掘り出された認識票。刻印された名前と行政の記録、そして、遺族の記憶が重なり合い、持ち主の故郷へと導いた。
縦4・8センチ、横3・5センチの長円形の真鍮(しんちゅう)製の札。さびた表面に「徳四三一〇」「松尾春雄」の刻印がある。祖父の名だ。熊本市中央区の松尾誠さん(73)は今月9日、紙包みを開いて初めて手に取った。「重たい感じがします」。軍人・軍属が死傷した際の身元確認のために日本軍が支給していた認識票だった。
誠さんの祖父の消息は、戦後1年半ほど経ってから、「沖縄本島米須で戦死」と家族に通知された。沖縄戦などの戦没者の碑「平和の礎(いしじ)」にも刻銘されている。熊本市出身の職業軍人。沖縄の前には旧満州(中国東北部)にいた。
誠さんが小学1年だったとき、…