記録的な猛暑となったこの夏、「紀州の梅」で知られる日本一の梅の産地・和歌山県の梅干しメーカーがフル稼働している。熱中症予防に手軽に塩分補給ができるとして、注文が殺到しているからだ。生産が追いつかず、受注を控える業者も出ている。
同県みなべ町にある梅干し加工販売会社「ウメタ」の工場では、例年ならお盆を過ぎると生産が落ち着くはずが、今年はフル稼働が続く。注文に応えるため生産を増やしているが、同社の調味用タンクはすでにいっぱい。梅に味が付くまで1~3週間ほどかかるため、生産能力を超えている状態が7月から続いている。
同社の泰地祥夫社長(59)は「ありがたいことだが仕込みが間に合わず、出荷量の調整をせざるを得ない。お客様に申し訳ない」と話す。これだけ継続して売れるのは珍しいという。
もともと夏は、最も梅干しの需要が増える時期だ。今年は連日の暑さに加え、7月初めにテレビのバラエティー番組で「熱中症予防に梅干し」と紹介されたことなども人気に拍車をかけたとみられる。人気の背景について、食文化研究者の小泉武夫・東京農業大学名誉教授(75)は「塩分あり、クエン酸ありで、梅干しは熱中症予防、疲労回復に効く。防腐効果を期待して弁当やおにぎりにも入れられ、日本人の食生活を支えてきた『万能薬』だ」と指摘する。
和歌山県は梅の国内収穫量の6…