避難訓練の参加者を公募で集める取り組みが、コンサートホールやレジャー施設に広がっている。こうした施設は不特定多数の人が集まり、子どもや高齢者、障害がある人といった支援の必要な客も多い。実践的な訓練をすることで課題を見つけやすいという。
「慌てずゆっくり降りてください」。「防災の日」の1日午前、JR横須賀駅(神奈川県横須賀市)で、津波を想定した避難訓練があった。事前に公募で集めた約1100人が乗客役として参加し、はしごを使わず降車。職員の呼びかけで近くの広場へ避難した。家族で参加した主婦の江口由香さん(50)は「予想以上に高さがあって怖かった。実際は乗客同士で助け合う必要があると感じた」。
JR東日本横浜支社では毎年、職員が乗客に扮して訓練をしてきたが、今回、初めて公募で乗客役の参加者を集めた。広報室の早野墾(ひらく)さんは「どんな誘導や対応が必要か、これまでより実感できる」と話す。災害時は、子どもや体の不自由な人の誘導で、乗客に協力を求める場合もある。そうした対応を乗客に知ってもらう狙いもあるという。
葛西臨海水族園(東京都江戸川区)では、7月7日に訓練があった。館内に「大きな揺れを感じています。水槽から離れ、姿勢を低くして身を守ってください」とアナウンスが流れ、職員の誘導でベビーカーや車いすの利用者を含む約1500人が16分で建物外の広場へ避難した。家族で参加した会社員の越智直美さん(44)は「きちんと誘導してもらえて安心した」と話した。
同園では、東日本大震災を機に職員の半数の約40人が参加する避難誘導訓練を始めた。しかし、「時間も短く実感が湧かない」と声が上がり、昨年、初めて参加者を公募。今年は園内無料開放などの特典を付けてふだんの日曜と同じ規模に拡大した。飼育展示課の矢代学・管理係長は「わかりにくい道や段差で危険な場所など、避けるべき経路が見つかった。災害時の対応や態勢を整えるために非常に重要な訓練だった」と手応えを感じた。
危機管理コンサルティング会社「ニュートン・コンサルティング」によると、参加者を公募する避難訓練は、東日本大震災をきっかけに盛んに開かれるようになった。大きな地震が起きるたびに増える傾向にある。特に盛んなのが演奏会場の訓練だ。
神戸国際会館(神戸市中央区)…