アダルトビデオ(AV)への出演強要が問題になっている。一方「性の話題」を公に議論するのははばかられる雰囲気も感じる。そんな中、佐賀市の映画館で、女性だけでAVを鑑賞し、語り合うイベントがあると聞いた。どんな雰囲気になるかと興味がわき、参加した。
イベントは先月、佐賀市松原2丁目の「シアターシエマ」であった。上映されたのは父親と娘の関係を描いた作品のダイジェスト版(約50分)と、そのメイキングなど。ドラマ仕立てで、性行為や暴力シーンも描かれる。40人ほどの参加者は席を立たず、静かに見入っていた。
「爽快だね。これだけ大勢の女性が一緒にAVを見るって、日本初ですよ。新たな扉を開いてくれた」
上映後、作品をつくった伊藤智生監督(62)が参加者に語りかけた。伊藤監督は「TOHJIRO」として約30年AVを撮っている。AVの世界に入り、自分の居場所がない女性らに目が留まり、お金や名声より「必要とされたい」のだと感じたという。「一歩間違うと(世の中から)切り捨てられるようなやつが好き。この世にあるってことは意味がある」と話す。
一方、ここ数年の業界については、大手の進出で手っ取り早く興奮できればいいという作風が増えていると批判。俳優との関わりについても「信頼関係ができていればさらけ出してくれる。強要問題は、モノのように扱うから起きる」と話した。
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