「ずっとずっと考えていて、お返事が遅くなっちゃったの」。今年7月、電話口の樹木希林さんは、一言一言、考えながら話しはじめた。夏休みを前に、生きづらさを感じる若者へのメッセージをお願いした取材。編集部に届いた直筆のファクスの言葉をまとめた記事はネット上で大きな反響を呼んだ。人柄のにじむ文字とイラストでつづられていたのは樹木さんの「命」についての思いだった。
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取材は、朝日新聞が運営するスマホ向けメディアwithnewsの企画「#withyou」として依頼した。樹木さんは、これまでにも、当事者の視点で不登校や引きこもりについて伝える「不登校新聞」などで発言をしていた。
樹木さん本人から編集部に電話があったのは、取材依頼の1週間後、7月中旬のことだった。
「ずっとずっと考えていて、お返事が遅くなっちゃったの。ごめんなさいね」
映画などで聞き慣れた気さくな口調。一言一言、考えながら説明するように、樹木さんは、こう続けた。
「どうしたら伝わるのかしら。本当に無力よね、まったく書けないの」
がんとの闘病を公表していた樹木さん。つらくてつらくて、今まさに死を考えている若者の姿を思い、言葉を探しているようだった。
「でもね、死んだ後の世界は素…